教員の研究紹介
樋口 悠子

認知・情動脳科学専攻 Major of Cognitive and Emotional Neuroscience

精神病性障害における神経生理学的研究
Yuko Higuchi神経精神医学 
樋口 悠子 Yuko Higuchi
  • TEL : +81764347323
  • URL : https://researchmap.jp/yhiguchieeg
  • Keywords : 統合失調症/精神病発症リスク状態/精神生理学/神経生理学/不飽和脂肪酸/事象関連電位/ミスマッチ陰性電位/早期介入/リエゾン精神医学

研究の背景と目的 Background and Purpose of Study

事象関連電位と精神疾患

神経生理学的研究として、事象関連電位 (Event-related potentials; ERPs)を中心に測定を行っています。ERPとは、脳波検査により測定される脳が内的あるいは外的な出来事を認知した時に発生する電位変化です。振幅や潜時を測定することで量的な評価が可能です。ERPsは、統合失調症などの精神疾患で異常がみられることがよく知られています。

我々は主に統合失調症患者やその高危険群(at-risk mental state, ARMS)を対象に、代表的なERPであるP300mismatch negativity (MMN)を測定しています。

【事象関連電位の測定方法】

当施設では聴覚刺激を用いてERPsを測定しています。必要な装置は脳波計、脳波キャップ、ヘッドホン、音刺激発生装置、刺激提示用モニター、押しボタンおよび解析ソフトであり、非侵襲的かつ簡便に測定できることが特徴です(図2,3)。

 

研究内容

これまで主に、P300およびMMNを用いた①薬理学的研究(対象薬物の投与前後での変化)、②統合失調症のバイオマーカ研究 について様々な論文を発信してきました。以下に、代表的な研究の概略を紹介します。

 

①薬理学的研究:オランザピン投与によるP300の変化(Higuchi et al.,2008

統合失調症患者にオランザピンを投与したところ、P300振幅の増大が見られ、更にLORETA (low resolution electromagnetic tomography)により解析したP300の発生源電流密度(CSD; current source density)が左上側頭回にて上昇しました。CSDの増加は、言語学習記憶課題(JVLT)の成績および陰性症状(SANS)の改善と有意な相関を示しました(4)

最近はOmega-3不飽和脂肪酸の統合失調症に対する効果と精神病発症予防効果にに注目し、介入研究を行いました(現在はエントリー中止)。  

② 統合失調症バイオマーカ研究:Duration MMN (dMMN)を用いた精神病発症予測(Higuchi et al.,2013,2014, Tateno et al., 2020)

ARMS患者を対象に持続長MMN (duration MMN; dMMN)を測定し前方視的に観察したところ、統合失調症を発症した群(Converter; Conv)は、発症しなかった群(non-Converter; NonC)と比較してベースライン時点でのdMMN振幅が有意に低値でした。このことから、ベースラインのdMMNは将来の精神病発症を予測できるマーカーである可能性が示唆されました(5)

更に、dMMNの縦断的変化について検討しました。dMMNはConvで縦断的に減少しましたが、NonCでは減少が認められず、このことも将来の精神病発症を予測できるマーカーである可能性が示唆されました(図6)

参考文献

1            Higuchi Y, Seo T, Miyanishi T, et al., Mismatch negativity and p3a/reorienting complex in subjects with schizophrenia or at-risk mental state. Front Behav Neurosci, 2014. 8: 172.

2            Higuchi Y, Sumiyoshi T, Kawasaki Y, et al., Electrophysiological basis for the ability of olanzapine to improve verbal memory and functional outcome in patients with schizophrenia: a LORETA analysis of P300. Schizophr Res, 2008. 101(1-3): 320-30.

           Higuchi Y, Sumiyoshi T, Seo T, et al., Mismatch negativity and cognitive performance for the prediction of psychosis in subjects with at-risk mental state. PLoS One, 2013. 8(1): e54080.

4            Tateno T, Higuchi Y, Nakajima S, Sasabayashi D, Nakamura M, Ueno M, MizukamiY, Nishiyama S, Takahashi T, Sumiyoshi T and Suzuki M. Features of Duration Mismatch Negativity Around the Onset of Overt Psychotic Disorders: A Longitudinal StudyCerebral Cortex, in press.

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