先端ナノ・バイオ科学専攻 Major of Advanced Nanociences and Biosciences
Development of wearable sensors for screening of biomolecules in living sysems
菅野 憲 Akira Kanno
- TEL : 076-445-6868
- URL : http://www3.u-toyama.ac.jp/environ/
- Keywords : in vivo sensing, wearable sensor, structural color, continuous monitoring
研究の背景と目的 Background and Purpose of Study
規則正しく整列した細孔を有する逆オパール構造(IOS)のポリマーに白色光を照射すると,高分子の屈折率・格子定数・観測する角度に応じて,ブラッグの法則およびスネルの法則により説明される単色の反射光(構造色)を呈する。この「構造色」の変化を利用することで,退色の恐れがない生体分子センサーを開発できないかと考えた。具体的には,標的分子の濃度に応じて可逆的に膨潤/収縮することで格子定数が変化し,結果,構造色が変わるセンサーの開発を試みている。現在,実施例として女性ホルモン(エストロゲン)を可視化検出できるセンサーフィルムの開発に取り組んでいる。本センサーの設計概念は,原理的には標的を生体分子全般に拡張可能であるので,標的生体分子に応じた高い選択性を有するカスタムメイドのセンサーとなりうる。
Periodically ordered interconnecting porous gel, inverse oral structure (IOS) gel, exhibits a structural color on the basis of Brag diffraction of light. Using an IOS hydrogel, we address the development of in vivo sensors of biomolecules. The porous hydrogel shows a rapid changes in its volume upon the stimulations with target molecules, resulting in the changes in structural colors. As a practical examples of this system, we try to develop a sensor film to monitor estrogens in living systems. The basic concept is applicable to the development of sensors for other biomolecules.
本研究の領域横断性
生体分子を認識して膨潤/収縮し,構造色が変化するセンサーの構築は分析化学の領域ではあるが,開発したセンサーを皮下に埋め込んで連続的モニターするシステム構築のためには,医学薬学系の領域との共同研究が必須であるため,領域横断的な研究であるといえる。
研究内容
生体分子が,生体内のいつ・どこで・どれぐらい機能発現しているかを分析することは,生命科学のみならず化学においても重要なテーマの1つである。体内での生体分子動態を低侵襲で分析するため,さまざまな化学的アプローチが試みられている。例えば,糖尿病患者の血糖値管理のため,血糖値を連続的に精度良く,かつ低侵襲でモニターする手法がいくつか考案されている。それらの多くはグルコースオキシダーゼを用いた電気化学的手法であるため酸化還元電流を検出する導線を体内に埋め込む必要があり,患者への負担が大きい。 そこで,これまでの研究の技術的背景にあった遺伝子工学的手法を駆使することで,標的生体分子に応じたカスタムメイドの高分子ゲルセンサー開発できないかと考えた。具体的には,アクリルアミド系モノマーにステロイドホルモンである女性ホルモンの1つエストロゲンとその受容体であるエストロゲン受容体(ER)タンパク質を化学的に結合させる。これらの化学修飾モノマーを重合させ,受容体–リガンドが架橋点となるIOS高分子ゲルを作製する(Figure 1)。
Figure 1 Scheme of the construction of IOS gel.
試料中のエストロゲンは,競争的に高分子ゲル中のERと架橋点を形成しゲルは膨潤し,結果,構造色が変化する(Figure 2)。この高分子ゲルの膨張による構造色変化を指標としたステロイドホルモンセンサーを開発できると考えた。
Figure 2 Scheme of changes in structural colors.
高分子ゲルの膨張/収縮は,(A)高分子を構成するポリマー鎖と溶媒との親和性,(B)ポリマー鎖の荷電状態,(C)ポリマー鎖同士の架橋点数,に支配されることが知られている.(C)における架橋点として,エストロゲン受容体のリガンド結合部位(ER-LBD)とエストロゲンである17β-エストラジオール(E2)との複合体を利用する。架橋ゲルの調製は,均一な共重合ゲルよりも膨潤/収縮の速度および可逆性が高いと報告されているセミ相互侵入高分子網目(semi-IPN)の合成法に基づいて行う(Figure 3)。
Figure 3 Scheme of the preparation of semi-IPN gel.
参考文献
- D. Nakayama, Y. Takeoka, M. Watanabe, and K. Kataoka, Angew. Chem. Int. Ed., 42, 4197–4200(2003).
- T. MiyataN. Asami, K. Okawa, and T. Uragami, Polym. Adv. Technol., 17, 794–797 (2006).