演者:田邉 元三 先生(近畿大学 薬学部 医療薬学科 有機薬化学研究室 教授)
日時:2025年10月17日(金) 15:00-16:30
会場:富山大学 富山大学工学部・多目的ホール
参加人数:約70名
本セミナーでは、アーユルヴェーダ由来の植物“Salacia”に含まれる天然物 salacinol(1)を中心に、糖尿病治療薬としての可能性について紹介された。salacinolは、既存薬であるアカルボースやボグリボースに匹敵する強力なα-グルコシダーゼ阻害活性を示すほか、構造化学的にも珍しいチオ糖スルホニウム塩であり、硫黄原子上にポリオール側鎖を持つ特異な構造を有する。講演では、1を含む関連スルホニウム塩(2〜6)の合成法の一部が紹介され、さらに類縁体の合成にも取り組んだ結果、1の約40倍の活性を示す化合物(7)の合成にも成功した。これらの成果は、構造活性相関(SAR)研究の重要性を示すものであり、創薬研究における天然物の有用性と可能性を改めて認識させられる内容であった。創薬を目指す学生にとって、天然物化学と医薬品開発の接点を学ぶ貴重な機会となった。

