【12月9日(月)開催】小林 基弘先生 「炎症と糖鎖」

「炎症と糖鎖」

講師:小林 基弘 先生
福井大学医学部腫瘍病理学講座 教授
日時/2019年12月9日 (月)17:00~18:00
会場/富山大学 杉谷キャンパス 医学部 研究棟2階 ゼミ室
世話人/笹原 正清
PDFファイル 講演ポスター (684KB)

【セミナー報告】
参加人数:約25名
リンパ節,扁桃,パイエル板といった二次リンパ組織の実質を構成するリンパ球は,輸出リンパ管から胸管を経て血管系に入る。その後リンパ球は,血流に乗って二次リンパ組織に辿り着き,そこに存在する特殊な血管を通過して再び二次リンパ組織の実質に戻る。この現象は,北太平洋で大きく育ったサケが産卵のために自分の生まれた川に帰巣(ホーミング)する様子に似ていることから,リンパ球ホーミングとよばれる。 リンパ球ホーミングは多段階の分子シグナルによって精密に制御されており,末梢血中のリンパ球が発現するセレクチンと二次リンパ組織の高内皮細静脈(high endothelial venule; HEV)の内腔面に発現している硫酸化シアリルルイスX糖鎖との比較的弱い結合によりHEV内腔面を転がる(ローリング)ことで速度を落とす。次にリンパ球表面のインテグリンが,HEV内腔面に発現しているICAM-1,VCAM-1,MAdCAM-1と結合することで,リンパ球はHEV内腔面に強固に接着する。そして最後に,リンパ球は血管内皮細胞の間隙から血管外の二次リンパ組織実質に遊走することについてご講演いただいた。 さらに,このリンパ球ホーミング機構が二次リンパ組織における生理的なリンパ球ホーミングのみならず,種々の慢性炎症性疾患の病態形成にも関与しているという最新の研究結果について詳細にご講演いただき,慢性炎症性疾患の炎症巣におけるリンパ球浸潤の制御機構について新たな知見を学ぶことができた。(報告者:山本 誠士)