教員の研究紹介
古市 厚志

認知・情動脳科学専攻 Major of Cognitive and Emotional Neuroscience

統合失調症における自己回想過程の神経基盤の変化
Altered neural basis of self-reflective processing in schizophrenia
Atsushi Furuichi神経精神医学 Neuropsychiatry
古市 厚志 Atsushi Furuichi

研究の背景と目的 Background and Purpose of Study

 自己意識 self-awareness の障害は統合失調症の中核的な特徴であると考えられている。特に統合失調症に特異性が高く、診断における有用性が認められているSchneiderの一級症状の多くは、自己の精神活動や身体活動を他者へ帰属することと捉えることができる。

 自己意識を調べる心理課題のひとつである自己回想課題を用いた健常者の神経画像研究では、内側前頭前野や帯状回などの皮質正中構造の賦活が報告されている。しかし統合失調症を対象とした研究は数少なく、一致した所見は得られていない。

 本研究では、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて、統合失調症患者の自己回想過程における神経賦活およびその臨床症状との関連を検討することにより、統合失調症における自己意識の障害の成立機序を明らかにすることを目的とした。


 Impaired self-awareness is a core feature of schizophrenia, which be related to the classical clinical symptoms and deficits in social functioning. Previous functional magnetic resonance imaging (fMRI) studies examining self-reflection processes in schizophrenia have produced inconsistent results.

 We examined by fMRI the neural activities involved in self-reflective processing compared with those in other-reflection in schizophrenia with relatively short illness duration and healthy subjects.

本研究の領域横断性

 本研究は、自己意識に関する神経基盤を調べるために脳画像を用いた研究であるが、神経生理学や認知心理学などの側面からも検討することで、さらに自己意識についての理解が深まると考えられる。

研究内容

 統合失調症患者15名と健常対照者15名を対象とした。fMRIの課題として、自己回想課題、他者回想課題、単純ボタン押し課題(ベースライン)の3条件を用いた。自己課題では、対象者に人物の性格、能力、態度などの特徴を表した文章を提示し、その内容が自分に当てはまるかどうか(他者回想課題では、親しい友人に当てはまるかどうか)を判断させボタン押しをさせた。

 統合失調症患者は、自己回想課題や他者回想課題について健常者とは異なった脳活動パターンを示した。特に自己回想課題については、統合失調症患者は健常者と比較して前頭-頭頂領域における過賦活の所見が得られた。研究で得られた所見は、統合失調症の中核的徴候の背景にある自己意識障害に関して、その神経基盤の一部を明らかにしたものである。

参考文献

Atsushi Furuichi, Yasuhiro Kawasaki, Tsutomu Takahashi et al. Altered neural basis of self-reflective processing in schizophrenia: An fMRI study. Asian J Psychiatr. 45: 53-60, 2019.
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